日本口蓋裂学会雑誌
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口蓋裂術後構音障害患者の構音訓練におけるダイナミツクパラトグラフィーの有効性について
/s/音の訓練過程の評価
山下 夕香里道 健一今井 智子鈴木 規子
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1988 年 13 巻 2 号 p. 242-252

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抄録
主として舌運動様式の異常による構音障害の訓練過程におけるダイナミックパラトグラフィー(DP)の有用性を検討するために独自の評価法に基づいて,口蓋化構音と側音化構音とを合併し,ほぼ同じ手順で訓練された口蓋裂術後症例5例のノs/音の訓練経過を客観的に評価した.
方法:訓練過程の評価基準として設定した訓練段階(Stage)は舌運動様式と呼気操作を組合せて5段階に分類し,それぞれの段階をさらに単音から会話までの8レベルに細分化し,1音につき40レベルの音の訓練レベルを設定した.さらに音の訓練に先立って基礎訓練を行う場合には4レベルの基礎訓練レベルを追加設定した.訓練は原則として訓練レベルを順次進めることとし,各訓練日において達成された訓練レベル(正答率80%以上)を記録し,訓練レベルの進み方によって全体の訓練過程を評価した.
結果:1)異常な舌運動様式が顕著に認められた重度症例群は軽度症例群に比較して/s/音の訓練回数が多かった.
2)DP法の症例は従来法の症例に比較して/s/音の訓練回数が少なかった.
3)DP法の症例では基礎訓練に時間を要したが,基礎訓練によって舌背を挙上する習癖が除去されると短期間で/s/・音が習得されるという改善過程を示した.
4)従来法の症例では聴覚判定のみでは音の判定がしにくいことがあり,舌と口蓋の微妙な接触様式を習得させるのに時間を要した.
以上の結果から,異常な舌運動様式に基づく構音障害の訓練においては従来法と比較してDP法が有効であることが明らかとなり,またわれわれの考案した評価法の妥当性が示唆された.
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© 一般社団法人 日本口蓋裂学会
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