抄録
我々は下垂体下部に穿孔した鼻咽腔奇形腫を伴う口蓋裂の症例を経験したので報告する.症例は6カ月女児.不完全口蓋裂を認め,その披裂部から栂指頭大の腫瘤を認めた.腫瘤は充実性の前半部と嚢胞性の後半部とから成っていた.全身麻酔下に口蓋披裂部から腫瘤摘出術を施行した.腫瘤は発生母地と思われる鼻咽腔上壁と茎状の突起にて連なっていた.同部には,ラトケ嚢の遺残と思われる陥凹があり,腫瘤の茎がこの陥凹にはまり込むような様相を呈していた.腫瘤摘出後,頬部から粘膜及び粘膜下組織を複合移植として陥凹部を閉鎖した.病理組織学的検索では,外胚葉性の中枢神経組織,粘液腺,中胚葉性の骨,骨髄及び軟骨組織を認め,奇形腫と診断された.発生学的にはラトケ嚢の遺残を認め,本奇形腫が同部での組織の移動と癒合に関係しているのではないかと思われた.本症例における口蓋裂は,口蓋突起の癒合が,奇形腫によって妨げられたために発生した可能性が示唆された.