抄録
口蓋弁後方移動術を併用した咽頭弁移植術法(unified velopharyngeal plasty)において,手術侵襲を軽減し良好な鼻咽腔閉鎖機能を賦与するために,口蓋粘膜弁法による口蓋弁の形成を行い,露出創面の被覆と口蓋弁の接着固定にフィブリン接着剤ティシールを用いる手術方法を考案し,18症例に適用した。
本術式の概要は以下のとうりである。1)硬口蓋後方3分の1より骨膜ならびに大口蓋神経血管束を温存し,口蓋粘膜弁を挙上剥離する。2)軟口蓋鼻腔側粘膜に横切開を加え,充分な軟口蓋の後方移動をはかる。3)咽頭後壁より上茎咽頭弁を採取し,軟口蓋へ移植する。4)口蓋帆挙筋筋束を再構成した後,口蓋弁により咽頭弁ならびに軟口蓋部創面を被覆する。5)口蓋弁後方移動により硬口蓋に生じた露出創を保護するためにティシールにより被覆する。本法の特徴は,口蓋弁形成時に粘膜弁を作製することによって,骨口蓋への手術侵襲が軽減されること,口蓋神経血管束から遊離した口蓋粘膜弁は広く展開することができるため,手術野が直視下に明示され操作が正確にできること,鼻腔側粘膜に加える横切開に応じて軟口蓋の後方移動が充分達成出来ること,ティシールを用いることによって創の良好な被覆がはかられ治癒機転が促進されることである。