日本口蓋裂学会雑誌
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当科に来院した口唇裂口蓋裂患者の臨床統計的調査
冨永 礼司伊藤 大輔天野 浩美山本 真岩田 耕治宇治 正光馬場 祥行須佐美 隆史本橋 信義大山 紀美栄黒田 敬之
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1994 年 19 巻 3 号 p. 164-176

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抄録

東京医科歯科大学歯学部附属病院矯正科に来院した口唇裂口蓋裂患者の実態を把握する目的で,1971年から1991年の問に当科を受診した新患患者を対象として統計的観察を行った.
検討項目は(1)年度別来院者数,(2)性別及び年齢,(3)裂型,(4)居住地域,(5)紹介元医療施設,(6)治療開始年齢,(7)歯槽弓collapseの様式,(8)crossbiteの発現部位である.なお,検討対象は(1)~(4)については全来院患者2446名,(5)(6)については,当科が専門外来登録を開始した1977年以降に治療を開始した患者1237名,(7)(8)にっいては,治療を行ったもののうち他の先天異常を伴うものを除き,資料の完備している(7)593名(8)782名とした.
結果:(1)昭和57年の健康保険導入以降急増したが,ここ数年は毎年約120名前後の値を示した.(2)6~8歳で来院する患者が最も多く全体の43%を占めた.全体の男女比は女子46.0%男子54.0%であった.(3)口唇口蓋裂は片側性が48.9%,両側性が16.2%,あわせて65.1%,口唇裂は片側性14,3%,両側性2.4%あわせて16.7%,口蓋裂は17.2%であった.口唇口蓋裂に対する口唇裂,口蓋裂の比率が年度を追うにつれ相対的に増加する傾向がみられた.(4)東京が最も多く,関東6県と静岡県がそれに次いだ.(5)診療科別にみると,口腔外科52.7%,形成外科23.7%,その他23.5%であった.このうち本学他科からの紹介が約42%を占めた.(6)10歳で治療を開始したものが最も多く全体の17.3%を占めた.(7)片側性,両側性口唇口蓋裂共に各segmentがbutt-jointで接触しているものが過半数を占めていた.(8)口唇口蓋裂,口蓋裂に関してはtotal crossbiteをしめすものが28.4%と最も多かった.口唇裂ではcrossbiteのないものが32.5%と最も多く,crossbiteの程度は他の裂型に比較して軽度である結果が得られた.

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© 一般社団法人 日本口蓋裂学会
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