日本口蓋裂学会雑誌
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片側性唇顎口蓋裂者における鼻上顎複合体の変形
安藤 葉介石川 博之中村 進治
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1994 年 19 巻 4 号 p. 222-240

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抄録
片側性唇顎口蓋裂者における鼻上顎複合体の形態の特徴を明らかにするために,8歳から12歳までの片側性唇顎口蓋裂者24名(男子12名,女子12名),片側性唇顎裂者24名(男子12名,女子12名),硬軟口蓋裂者24名(男子12名,女子12名),および非破裂者25名(男子13名,女子12名)の矯正治療初診時の正面および側面頭部X線規格写真を分析した.さらに片側性唇顎口蓋裂者4名の三次元表示CT画像を用いて検討し,以下の結果を得た.
1)片側性唇顎口蓋裂者の鼻上顎複合体各部の左右的変位は,鼻中隔中央部が患側に,鼻中隔最下点および上顎中切歯根尖が健側に変位し,また上顎中切歯が患側へ傾斜するといった一定のパターンを示した.さらに,上顎骨幅径に健側および患側で差は認められなかったが,上顎第一大臼歯部の歯列幅径については患側が小さい傾向を示した.
2)鼻上顎複合体に変位をもたらす要因に関しては以下のごとく考えられた.鼻中隔の弯曲は,顎裂,口蓋裂および口蓋形成手術に起因し,上顎中切歯根尖の健側変位および歯軸の患側傾斜は顎裂に起因している.また,患側第一大臼歯部の歯列幅径の狭小,後上顔面高および中顔面の深さの短小は,口蓋形成手術の影響による.さらに上顎中切歯歯軸の舌側傾斜は,口唇,口蓋形成手術による.
3)片側性唇顎口蓋裂者の変形は鼻上顎複合体の範囲に限定されていた.上顎歯列歯槽形態について,ma-jor segmentは前方部が健側に変位し,前歯部歯槽突起が口蓋側に傾斜しており,minor segmentは後方部を中心に側方歯部が内方へ回転して変位し,歯槽突起全体が口蓋側に傾斜していた.
4)鼻中隔の弯曲度は,口蓋形成手術による上顎骨の成長抑制の程度をあらわす指標になりうるものと考えられた.
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© 一般社団法人 日本口蓋裂学会
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