日本口蓋裂学会雑誌
Online ISSN : 2186-5701
Print ISSN : 0386-5185
ISSN-L : 0386-5185
片側性口唇裂口蓋裂患者における下顎側方偏位と顎顔面形態の関連性について
朝日藤 寿一Gazi Shamim Hassan山田 一尋森田 修一花田 晃治
著者情報
ジャーナル フリー

1994 年 19 巻 4 号 p. 241-248

詳細
抄録
片側性口唇裂口蓋裂患者における顎顔面形態と顎口腔機能異常の関連性を解明する一貫として,正面頭部X線規格写真(以下正面セファロとする)を用いて顎顔面形態について検討を行った.
対象は新潟大学歯学部附属病院矯正科を受診したdental age IIIC以降の片側性口唇裂口蓋裂患者21例(男子12名,女子9名,平均年齢17.7歳)である.これらの中心咬合位で撮影した正面セファロをトレースし,トレース上で眼窩縁と斜眼窩縁との交点を結んだ線分(Lo-Lo')を水平基準線(H)とした.
Hに対し,舗骨鶏冠(CG)の中心を通る垂線を頭蓋の正中線(M)とし,下顎側方偏位量(D),上顎左右同名大臼歯歯槽頂(J,J')を結ぶ平面(N),咬合平面(OP),下顎下縁平面(G)について角度計測,ならびに水平,垂直距離を計測後,これらの結果とDとの関連性を回帰分析を行い,以下の結果を得た.
1.下顎が患側に偏位する傾向が認められた.
2.N,Op,Gは顎裂側に向かい上向きに傾斜し,Dと有意な正の相関が認められた.
3.MからJおよびGonion(Go)までの距離の患側の計測値と非患側の計測値の比率と下顎偏位量との間には相関関係は認められなかった.
4,HからJ,咬合面(Mo),Goまでの距離の,患側と非患側の計測値の比率とDとの問には有意な負の相関関係が認められた.
以上より片側性口唇裂口蓋裂患者においては口蓋裂の形成手術による直接的な上顎基底骨の成長抑制により・咬合平面,下顎下縁平面の傾斜が生じ,下顎が顎裂側に偏位する可能性が示唆された.したがって歯科矯正治療において歯の再配列を行う場合,傾斜している上顎基底骨,咬合平面に注意を払い臼歯部高径の左右差を十分考慮することが必要であることが示唆された.
著者関連情報
© 一般社団法人 日本口蓋裂学会
前の記事 次の記事
feedback
Top