日本口蓋裂学会雑誌
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粘膜下口蓋裂未手術症例の検討
朴 修三時岡 一幸加藤 光剛北野 市子仁田 直嗣
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1996 年 21 巻 3 号 p. 142-149

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抄録

1977年4月より1996年3,月の19年問に静岡県立こども病院の口蓋裂診療班を受診した粘膜下口蓋裂は154例である.そのうち手術を行った症例は67例,手術を行っていない症例は87例である.未手術症例のうち,精神発達に著しい遅れのある28例や経過観察期間の短い症例などを除外し,初回言語評価後2年以上経過観察できている22症例に検討を加え,以下の結果を得た.
初回言語評価は初診時年齢が4歳未満では4歳前後,4歳以降では初診時の言語評価とし,最終言語評価時年齢は外来で言語評価した最も新しい年齢とした.
1)初回と最終の言語評価時の間に鼻咽腔閉鎖機能が悪化した症例が3例,改善した症例が5例,残りの14例で変化がなかった.
2)初回言語評価時に構音障害がみられたのは5例で,全例に構音訓練を行い,最終言語評価時には2例に減少し,経過観察期間中に新たに構音障害が出現した症例はなかった.
3)乳児期にミルクの鼻漏出や哺乳困難などの症状があった症例は5例で,全例生後1年以内に症状は消失していた.乳児期のエピソードの有無と初回および最終言語評価時の鼻咽腔閉鎖機能には明らかな関連はみられなかった.
4)セファログラム検査で軟口蓋の厚さは3~5歳群で未手術症例が手術症例より有意に厚く,咽頭腔の深さと軟口蓋長の比が1.0以下を示した症例は手術症例に有意に多くみられた.
5)安静時の鼻咽腔閉鎖面形態は切痕型を示す症例が多くみられたが,有意のある傾向はみられず,鼻咽腔閉鎖機能との関連もみられなかった.
6)鼻咽腔閉鎖運動パターンでは手術症例と宋手術症例の問に差はなく,閉鎖運動パターンと鼻咽腔閉鎖機能にも関連はみられなかった.

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