velo-cardio-facia1症候群が,常染色体22q11部分欠失により,生じることがわかってきた.本邦ではvelo-cardio-facial症候群と,先天性鼻咽腔閉鎖不全,粘膜下口蓋裂とは,別の疾患概念でとらえられているが,臨床上の分類は困難である.これらの疾患の関連について調査する目的で,先天性鼻咽腔閉鎖不全,粘膜下口蓋裂症例における22q11部分欠失症の頻度とその症候を検討した.治療後の患者については鼻咽腔閉鎖,構音獲得の状態についても調査した.
対象は,先天性鼻咽腔閉鎖不全,粘膜下口蓋裂の8例で,velo-cardio-facial症候群に伴う他の症候(心奇形,顔貌の異常,学習障害)は症例の選択にあたり考慮せず,他の染色体異常が明確なものは対象から除外した.FISH法による染色体検査で8例中4例に22q11に欠失が認められた.陽性例の4例中,velo-cardio-facial症候群様の顔貌と軽度の学習障害は全例に認められたが,心奇形が認められた症例は1例のみであった.術後の3例では,鼻咽腔閉鎖が完全もしくは軽度の鼻漏出でもあるに関わらず,構音獲得は不良であり,学習障害が構音獲得を不良にする一因と考えられた.
以上より,先天性鼻咽腔閉鎖不全,粘膜下口蓋裂症例中には相当数のvelo-cardio-facial症候群が含まれていることが推察された.また,鼻咽腔閉鎖不全を主徴とするvelo-cardio-facial症候群では心奇形を伴うことはむしろ少ないと考えられた.顔貌や学習障害は見落しやすく,先天性鼻咽腔閉鎖不全,粘膜下口蓋裂を示す症例に対しては,疾患概念を明確にし,治療方針を決定するために染色体検査は必須である.velo-cardiofacial症候群と診断された場合には,関連各科による集学的な診断と治療が必要であり,特に神経科の果たす役割が大きいと考えられた.
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