抄録
片側性口唇口蓋裂患者における顎顔面の形態を把握するため,初診時のHellman developmental stage III Bで前歯部に逆被蓋を呈する片側性口唇口蓋裂患者40名(以下口蓋裂群と略す)と,同じくHellman developmental stage III Bで前歯部の被蓋関係が正常で口唇口蓋裂を伴わない不正咬合患者40名(以下正常被蓋群と略す)および前歯部の被蓋関係が反対で口唇口蓋裂を伴わない不正咬合患者40名(以下逆被蓋群と略す)の初診時における側面頭部X線,規格写真を用いてCoben分析を行い,各分析項目を変量として主成分分析を行った.t検定による結果の概要は以下に示す通りである.
口蓋裂群は正常被蓋群に比べて,1)上顎骨の前後径に有意差は認められなかった.2)A点の後退が認められた.3)上顎骨後縁の後方位が認められた.4)下顎骨の前後径に有意差は認められなかった.5)後顔面高が小さかった.6)下顎枝の前方傾斜が大きく,下顎角の開大が認められた.7)脳頭蓋底の大きさに有意差は認められなかった.
また,口蓋裂群は逆被蓋群に比べて,1)上顎骨後縁の後方位が認められた.2)下顎骨の前後径は小さかった.3)下顎枝と下顎体の前後径の差が大きかった.4)上顔面高と下顔面高の差が小さかった.5)Anterior lowerdental heightが大きかった.6)後顔面の劣成長が認められた.7)下顎枝の前方傾斜が大きく,下顎角の開大が認められた.8)下顎骨の後下方への回転が認められた.