日本口蓋裂学会雑誌
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染色体22q11の欠失を示した先天性鼻咽腔閉鎖不全症症例について
-顔面鼻咽腔症候群との関連-
今井 智子鈴木 規子森 紀美江上笹貫 さをり山下 夕香里道 健一
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1998 年 23 巻 4 号 p. 287-299

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抄録

われわれはこれまで特徴的顔貌を示す先天性鼻咽腔閉鎖不全症(CVPI)を顔面鼻咽腔症候群(VF:Velo-Facial syndrome)という1つの独立した疾患として取り扱ってきた。今回,当科で治療を行なったCVPI症例20例(VF症候群10例,疑われた症例1例,その他の症例9例)における染色体22q11の欠失を調査し,さらに染色体22q11の欠失の認められた症例と認められなかった症例について臨床症状および治療域績を比較したところ,以下の結果が得られた。
1.染色体検査の結果,VF症候群およびVF症候群が疑われた症例では全例に染色体22q11の欠失が認沈られ,CATCH22症候群と診断された。一方,特徴的顔貌の認められなかった症例では22q11の欠失は1例も認められなかった。
2.口腔内所見は,CATCH22症候群ではCalnanの3徴候がまったく認められない症例が多く,いわゆる粘膜下口蓋裂は1例もなかったが,非症候群では3徴候全てが揃った粘膜下口蓋裂が多かった。
3.軟口蓋造影X線検査による鼻咽腔形態は,CATCH22症候群では,軟口蓋が非薄で短い工型および転口蓋の長さと咽頭腔の深さとの関係が不均衡なII型が多く,非症候群では軟口蓋が薄く短い1型が多かった。
4.精神発達については,非症候群に比べてCATCH22症候群で軽度の精神発達遅滞を示す症例が多かった。
5.合併症については,CATCH22症候群で先天性心疾患,耳奇形が認められた。
6.治療成績については,非症候群に比べてCATCH22症候群で予後不良の症例および鼻咽腔閉鎖の改善に長時間を要する症例が多く認められた。
7.今回の結果から,特徴的顔貌はCATCH22症候群を疑う臨床的に有用な手がかりとなることが示唆された。

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