日本口蓋裂学会雑誌
Online ISSN : 2186-5701
Print ISSN : 0386-5185
ISSN-L : 0386-5185
Two-stage methodによる口蓋裂児の言語および顎発育に関する長期観察の1例
伊東 節子古賀 義之水野 明夫佐々木 元賢
著者情報
ジャーナル フリー

1998 年 23 巻 4 号 p. 312-323

詳細
抄録

two-stage methodを実施した両側不完全唇顎口蓋裂児1例について硬口蓋閉鎖前後15年間,18歳時まで言語と顎発育についてケアーを行ったので,その概要を述べる。
軟口蓋形成手術は1歳8か月時に実施され,obturatorは同術後3か月時より装着された。3歳11か月時,同装着時における言語機瀧は年齢並みであった。しかし,未閉鎖の硬口蓋に対して親の不安が著明であり,可及的早期の閉鎖を訴えた。4歳11か月時に歪み,置換の他に口蓋化構1音がごく1部に発現した。しかしこれは構音治療を必要とせず,5歳5か月時に自然消失を認めた。
硬口蓋閉鎖は6歳11か月時に実施し,同術後6か月時に良好な言語機能を認めた。歯科矯正治療は7歳8か月時より開始した。矯正科初診時言語障害は認められなかったが,12歳時に呼気鼻漏および開鼻声が出現していた。しかしその程度は僅少であり,処置は不要と考えられた。
歯科矯正治療は,混合歯列では拡大を行ったが,永久歯列では不要であった。上顎左側側切歯および右側第一小臼歯を抜去後,マルチブラケット装置による永久歯の整列と咬合の確立を行った。本報告例では顎関係に大きな問題がみられなかったため従来の手術方法に比較し,治療は比較的容易であったと考えられた。
以上から,本報告例におけるtwo-stagemethodの実施は言語,顎発育共に良好な結果であったと考えられた。ただし,本手術方法では,軟口蓋形成手術以来,未閉鎖の口蓋に対する親の不安がみられ,これに対して適切な指導および説明の重要性そして鼻咽腔閉鎖機能に対する長期ケアを要することが示唆された。

著者関連情報
© 一般社団法人 日本口蓋裂学会
前の記事 次の記事
feedback
Top