1998 年 23 巻 4 号 p. 324-330
口蓋裂患者では他の先天奇形を合併することがある。しかし,舌裂を伴うことは極めて稀であり,oral-facial-digitalsyndrome(OFDS)の特徴的所見として報告されている他はほとんど見られない。われわれは口蓋裂に舌裂,舌強直症,舌腫瘤,手指の奇形を合併した症例に遭遇し,治療する機会を得たので,OFDSとの関連を検討し報告する。
患者は,生後2か月女児で,1994年9月9日出生(3.276g)。出生時より口蓋裂,舌裂,舌強直症,舌腫瘤,手指に奇形を認めた。8か月時に舌形成術,舌小帯伸展術および舌腫瘤摘出術,1歳6か月時に口蓋形成術を施行した。現在3歳9か月で言語発育の遅滞を認めるが,良好な鼻咽腔閉鎖機能を獲得している。
本症例における口蓋裂,舌裂,舌小帯強直,舌腫瘤の口腔内所見,手指の所見はOFDSの報告例I,II,III,IV型に近いと考えられたが,顔面の奇形を合併しておらず,OFDSより口蓋裂に他の奇形が合併したものと考えられた。