日本口蓋裂学会雑誌
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上顎中切歯萌出前の顎裂への骨移植
右側不完全口唇顎裂1女子症例
幸地 省子北 浩樹熊谷 正浩佐藤 敦手島 貞一
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1999 年 24 巻 3 号 p. 313-321

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抄録
本症例報告は,5歳7か月,Hellman's dental age II C 期に,顎裂への新鮮自家腸骨海綿骨細片移植を施行した右側不完全口唇顎裂(神谷の裂型分類3,0,0)1女子症例の思春期性最大成長期前までの結果を示し,臨床的意義について考察したものである.術前のX線CT写真では,顎裂骨欠損形態は,前後的には近遠心顎裂幅がほぼ同じA型,垂直的には歯槽頂よりも鼻腔側が広い型であった.また上顎右側永久中切歯歯胚が,正中よりも左側に偏位して認められた.平均顎裂幅は9mm,移植骨量は約2.5gであった.骨移植後約1年で上顎裂側中切歯の萌出,次いで非裂側中切歯の萌出を認めた.X線写真所見で,術前に近心捻転,かつ遠心舌側傾斜していた裂側中切歯は,骨移植後に近心捻転が改善し,舌側傾斜の進行が停止した.骨移植後1年8か月から,裂側中切歯を唇側移動し遠心傾斜を改善した.上顎骨の成長方向は,3歳以降前下方,主として下方であった.また骨移植前後で成長方向に変化はみられなかった.裂側中切歯萌出前に顎裂への骨移植を行うことによって,歯軸が改善されると同時に歯科矯正治療が単純化される可能性が示唆された.
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© 一般社団法人 日本口蓋裂学会
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