頭部正面位において破裂音[p〓]発音時に鼻咽腔閉鎖が得られるものの,会話時あるいは単音発音時に軽度閉鎖不全が認められる軽度鼻咽腔閉鎖不全症例において,頭位を変化させることが,発音活動時の口蓋帆挙筋活動にどのような影響を与えるかを検討した。実験は,鼻咽腔内視鏡検査によって軽度鼻咽腔閉鎖不全症と判定した口蓋裂術後症例5名を対象に行った。口蓋帆挙筋活動は,被験者の頭部正面位,前屈位ならびに後屈位の3条件下において測定した。その結果,頭部前屈位と頭部正面位での口蓋帆挙筋活動に有意差は認められなかったものの,頭部後屈位の口蓋帆挙筋活動は頭部正面位,前屈位と比較して有意に大きな値を示した。すなわち,頭位の変化によって発音活動時の口蓋帆挙筋活動は影響を受け,頭部を後屈したときには頭部を前屈あるいは正面を向かせたときと比較して,大きな口蓋帆挙筋活動が必要であることが示唆された。