日本口蓋裂学会雑誌
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三次元デジタイザによる未手術片側完全口唇顎口蓋裂児の顔面と上顎の計測学的研究
山本 貴和子内山 健志
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2000 年 25 巻 3 号 p. 239-259

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抄録

片側口唇裂に対する口唇形成術は近年,著しい進歩を遂げたが,自然に見える対称的な外鼻と口唇を形成することは,特に完全裂ではいまだ難しい。手術結果を向上させるためには,口唇顎口蓋裂児の顔面と上顎の変形の特徴を三次元的に正しく把握しておくことが必要である。レーザーによる非接触式三次元デジタイザを使用して,口唇形成術直前に採取した20名の片側完全口唇顎口蓋裂患児の顔面と上顎の模型を,同一座標軸で計測を行った。ついで顔面変形と上顎変形との関係,および口唇破裂部の位置と破裂の程度について各種計測と解析を行い,次のような結果を得た。
顔面変形と上顎変形との関係については,顔面の項目である破裂内外側Cupid弓頂点の上下差が上顎の項目との間で最も高い寄与率を示した。次いで鼻尖の位置が,上顎の因子から強い影響を受けていることが示唆された。また,顔面変形に強く影響を与える上顎の因子は,上唇小帯付着部の位置と健側患側segmentの前後差であった。これらのことより,顔面軟組織の変形は上顎の骨格性の変形に影響を受けることが示唆された。
口唇破裂部の位置と破裂の程度については,それらに関する項目のデータの分布はほぼ正規分布に近い分布といって差し支えなく,特別な種類や型を示すものではなかった。

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© 一般社団法人 日本口蓋裂学会
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