日本口蓋裂学会雑誌
Online ISSN : 2186-5701
Print ISSN : 0386-5185
ISSN-L : 0386-5185
Furlow法を施行した口蓋裂児の混合歯列前期における顎顔面形態について
pushback法施行例との比較
小野 和宏朝日藤 寿一今井 信行飯田 明彦早津 誠高木 律男石井 一裕森田 修一花田 晃治
著者情報
キーワード: Furlow法, 顎発育, 口蓋裂
ジャーナル フリー

2001 年 26 巻 1 号 p. 23-30

詳細
抄録

Furlow法を施行した口蓋裂児の混合歯列前期における顎顔面形態を調査し,pushback法を行ったものと比較した.対象はFurlow法により口蓋形成手術を行った軟口蓋裂男児3名,女児5名の計8名(Furlow群)と,pushback法により口蓋形成手術を行った軟口蓋裂男児2名,女児5名の計7名(pushback群)である.手術時年齢はFurlow群では平均1歳8か月,pushback群では平均1歳7か月であった.側面頭部X線規格写真(Furlow群は平均8歳,pushback群は平均7歳11か月)および石膏歯列模型(Furlow群は平均7歳10か月,pushback群は平均8歳)を資料とし,写真分析では6項目の角度計測と4項目の距離計測を,模型分析では歯列幅径に関して9項目,長径に関して2項目の距離計測を行った.その結果,Furlow群はpushback群に比べ良好な顔の骨格型を呈しており,角ANB,角NAPo9,硬口蓋長を表す長さA'-Ptm'で両群問に統計学的有意差が認められた.また,Furlow群の上顎歯列弓はpushback群に比較して明らかに大きく,乳犬歯問幅径第一および第二乳臼歯間幅径,ならびに歯列弓長径で両群間に統計学的有意差が認められた.Furlow群では全例が交叉咬合のない正常な被蓋関係であり,それに対してpushback群では7名中6名に交叉咬合がみられ,前歯および臼歯部のものが4名,臼歯部のみのものが2名観察された.Furlow法は硬口蓋の組織を用いずに軟口蓋を延長できることから顎発育への影響が少なく,患児固有の成長を引き出すことができ,有用な手術法であることが明らかになった.

著者関連情報
© 一般社団法人 日本口蓋裂学会
前の記事 次の記事
feedback
Top