日本口蓋裂学会雑誌
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片側性唇顎口蓋裂患者における上顎前方牽引装置の治療効果の予測
重回帰分析を用いた試み
北澤 慎一石川 博之飯田 順一郎
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2001 年 26 巻 1 号 p. 7-15

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抄録

唇顎口蓋裂患者における上顎前方牽引装置の治療効果の予測を試みることを目的として,片側性唇顎口蓋裂患者29名(男子12名,女子17名,平均年齢6歳8カ月)を対象に,治療前の顎顔面形態と治療による上下顎の成長変化との関連について検討した.治療前および治療開始から1年後の頭部X線規格写真を用いて顎顔面の形態計測を行い,これらの計測値をもとに単相関分析および重回帰分析を行ったところ,以下の知見を得た.
1.単相関分析の結果,上顎前方牽引装置による上顎骨の前方成長量と治療前の鼻中隔の弩曲度および後上顔面高との問に有意な相関がみられ,上顎骨の前方成長の促進効果は口蓋形成手術に関連した個々の患者の成長発育能に依存することが示唆された.
2.Stepwise法を用いて,治療前の顎顔面形態から治療による変化を予測する重回帰方程式を算出したところ,上顎骨の前方成長量については,説明変数として鼻中隔の弯曲度,後上顔面高および前頭蓋底長が抽出され,また重相関係数は0.7以上で,変化量の分散の50%以上が説明された.
3.下顎骨の前後的位置の変化量および上下顎の前後的関係の変化量については,それぞれの重回帰方程式が変化量の分散を説明する割合は22%から39%と低く,予測を行うには不十分であると考えられた.
4.上顎前方牽引装置による上顎骨の前方成長の促進効果について,重回帰方程式を用いることにより,1変数で予測することに比較して,より正確に予測できる可能性が示唆された.

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© 一般社団法人 日本口蓋裂学会
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