日本口蓋裂学会雑誌
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関西方言話者におけるナゾメータ検査での日本語被検文と鼻咽腔閉鎖機能不全の評価
平田 創一郎和田 健舘村 卓原 久永野原 幹司佐藤 耕一
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2002 年 27 巻 1 号 p. 14-23

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抄録

ナゾメータ(Nasometer)を用いて,鼻咽腔閉鎖機能不全を評価するためには,日本語環境の特徴に基づいた被検文を作成する必要がある.本研究は,まず関西方言話者である成人健常者(8名)を対象に,母音,ば行音,ば行音による単音節の開鼻声値(nasalance score)の特徴的所見を明らかにした.この結果に基づいて作成したLP文(Low pressure sentence),HP文(High pressure sentence)を用いて,健常者群(10名),口蓋裂術後患者における境界型鼻咽腔閉鎖機能不全群(7名)と絶対的鼻咽腔閉鎖機能不全群(13名)を対象にしてナゾメータ検査を行った.検査から得られた開鼻声の平均値(MeanN),最小値(Meanmin-N),最大値(Meanmax-N)について分析した結果は以下の通りであった.
1.関西方言話者における母音,ば行音,ば行音による単音節での開鼻声値の特徴的所見はa.母音は子音よりMeanN,Meanmin-Nで高い値を示し,有声子音は母音および無声子音よりMeanmax-Nで高い値を示した.b.母音,ば行音,ば行音での母音の違いによるMeanNの順位は次の通りであった:[i]>[a]-[e]>[〓]-[o],[pi]>[pa]-[pe]>[p〓]-[po],[bi]>[be]>[ba]=[b〓]>[bo]
2.LP文とHP文から得られたMeanN,Meanmin-NおよびMeanmax-Nを用いると,健常者群と口蓋裂術後患者における境界型鼻咽腔閉鎖機能不全群,絶対的鼻咽腔閉鎖機能不全群についての一元配置分散分析で3群の判別が可能であることが示された.
以上のことから,日本語被検文に使用されるべき適性要素として,高い開鼻声値を示す有声子音,母音単音節[i]と後続母音を/i/とする音節は可及的に含まず,/o/〓/を含むことが望ましいこと,この所見をもとにして作成した本研究での日本語LP文,HP文モデルを用いると健常者群,境界型鼻咽腔閉鎖機能不全群,絶対的鼻咽腔閉鎖機能不全群の判別が可能であることが明らかになった.

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© 一般社団法人 日本口蓋裂学会
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