日本口蓋裂学会雑誌
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27 巻, 1 号
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  • 岡 正司, 窪田 泰孝, 中川 統充, 竹之下 康治, 緒方 祐子, 白砂 兼光
    2002 年27 巻1 号 p. 1-6
    発行日: 2002/04/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    口蓋裂を伴う患児50例(両側性口唇口蓋裂14例,片側性口唇口蓋裂21例,口蓋裂15例)において鼻咽腔形態と鼻咽腔閉鎖機能との関係について検討を行った.口蓋形成はすべて1.5±0.1歳時にpushback法で行った.鼻咽腔形態は口蓋形成術直後に実測するとともに,口蓋形成術直前と5歳時に撮影した側面頭部X線規格写真で計測した.鼻咽腔閉鎖機能は5歳時に評価し,良好,軽度不全,不全に分類した.結果は以下の様であった.
    1.口蓋形成術直後の鼻咽腔形態の実測値では,鼻咽腔形態と鼻咽腔閉鎖機能との関係は認められなかった.
    2.口蓋形成術直前での側面頭部X線規格写真の分析では,鼻咽腔形態と鼻咽腔閉鎖機能との関係は認められなかった.
    3.5歳時での側面頭部X線規格写真の分析では,鼻咽腔閉鎖不全群での軟口蓋長が軽度不全群や良好群と比較して有意に短かった.
    4.以上より,鼻咽腔閉鎖不全は,術直後の鼻咽腔形態よりもむしろ術後の成長過程における軟口蓋長の劣成長によって引き起こされると考えられた.
  • 初回口唇形成術前後の改善度評価
    本田 康生, 中村 典史, 長田 哲次, 笹栗 正明, 大石 正道
    2002 年27 巻1 号 p. 7-13
    発行日: 2002/04/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    口唇形成術前後の外鼻形態の改善度の評価を行うために,評価者の主観を反映させ得るファジィ理論を応用した外鼻評価システムを構築した.
    資料は片側性口唇(顎)裂および片側性唇顎口蓋裂の52例について術前および術後6か月以後に撮影された顔面写真である.
    一人の口腔外科医が鼻翼基部の偏位,鼻尖の偏位,鼻孔縁の下垂,鼻孔の非対称,鼻柱の偏位の5項目について視診評価を行い,VAS(Visual Analogue Scale)改善度を求めた.また,VASスコアを,good,medium,badの3つのカテゴリーに区分した言葉のデータに変換し,If-Thenruleに基づいてファジイ改善度を導いた.
    結果は,VAS改善度が33.9-38.4点,平均36.3点で,これらの結果は,術前の変形が強いものほど改善度が高くなる傾向が認められた.一方,ファジィ改善度は64.1-67.0点,平均65.9点で,評価者の主観(満足度)が反映された形となった.
    ファジィ外鼻評価システムは術後の評価に評価者の主観を反映させることが可能となり,口唇裂鼻の審美性の総合評価を行ううえで有用と思われた.
  • 平田 創一郎, 和田 健, 舘村 卓, 原 久永, 野原 幹司, 佐藤 耕一
    2002 年27 巻1 号 p. 14-23
    発行日: 2002/04/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    ナゾメータ(Nasometer)を用いて,鼻咽腔閉鎖機能不全を評価するためには,日本語環境の特徴に基づいた被検文を作成する必要がある.本研究は,まず関西方言話者である成人健常者(8名)を対象に,母音,ば行音,ば行音による単音節の開鼻声値(nasalance score)の特徴的所見を明らかにした.この結果に基づいて作成したLP文(Low pressure sentence),HP文(High pressure sentence)を用いて,健常者群(10名),口蓋裂術後患者における境界型鼻咽腔閉鎖機能不全群(7名)と絶対的鼻咽腔閉鎖機能不全群(13名)を対象にしてナゾメータ検査を行った.検査から得られた開鼻声の平均値(MeanN),最小値(Meanmin-N),最大値(Meanmax-N)について分析した結果は以下の通りであった.
    1.関西方言話者における母音,ば行音,ば行音による単音節での開鼻声値の特徴的所見はa.母音は子音よりMeanN,Meanmin-Nで高い値を示し,有声子音は母音および無声子音よりMeanmax-Nで高い値を示した.b.母音,ば行音,ば行音での母音の違いによるMeanNの順位は次の通りであった:[i]>[a]-[e]>[〓]-[o],[pi]>[pa]-[pe]>[p〓]-[po],[bi]>[be]>[ba]=[b〓]>[bo]
    2.LP文とHP文から得られたMeanN,Meanmin-NおよびMeanmax-Nを用いると,健常者群と口蓋裂術後患者における境界型鼻咽腔閉鎖機能不全群,絶対的鼻咽腔閉鎖機能不全群についての一元配置分散分析で3群の判別が可能であることが示された.
    以上のことから,日本語被検文に使用されるべき適性要素として,高い開鼻声値を示す有声子音,母音単音節[i]と後続母音を/i/とする音節は可及的に含まず,/o/〓/を含むことが望ましいこと,この所見をもとにして作成した本研究での日本語LP文,HP文モデルを用いると健常者群,境界型鼻咽腔閉鎖機能不全群,絶対的鼻咽腔閉鎖機能不全群の判別が可能であることが明らかになった.
  • 日本人片側性口唇口蓋裂患児についての試み
    須佐美 隆史, Michael MARS, 小宮 徳春, 松崎 雅子, 杉林 奈賀子, 富塚 健, 高戸 毅
    2002 年27 巻1 号 p. 24-33
    発行日: 2002/04/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    GoslonYardstickは片側性口唇口蓋裂(UCLP)患者の上下顎歯列弓関係を,臨床的に評価する方法で,グループ1:非常によい,グループ2:良い,グループ3:まずまず,グループ4:悪い,グループ5:非常に悪い,の5段階に評価する.この方法は,欧州を始めとする世界中の多施設比較研究の咬合関係の指標として用いられている.
    今回われわれは,GoslonYardstickを東京大学医学部附属病院(東大病院)において管理している日本人UCLP患者25名に適用した.評価は歯科矯正治療開始前で,平均年齢8歳5ヵ月の時点で行った.本研究では原法との評価基準の一致を図ることを重視し,評価を英国にて行った.Goslon Yardstickは,本来歯列模型を用いて評価を行うが,本研究では重く壊れやすい資料を運ぶことを避け,正面,左右側面,上顎咬合面の口腔内写真を用いた.得られた評価結果は,これまで報告された欧州施設の結果と比較した.
    その結果,写真は模型に比べ情報量がやや劣るものの,以下の所見を得た.
    1)Goslon Yardstickは,UCLP患者の咬合状態を評価するのに有用な方法と思われた.
    2)東大病院の患者25症例の評価結果は,グループ1はみられず,グループ2が2症例,グループ3が8症例,グループ4が12症例,グループ5が3症例で,「悪い」,「非常に悪い」(4+5)に分類されたものが6割を占めた.
    3)こうした結果は,どの欧州施設より悪く,我が国における治療結果に対するより詳細な調査が必要と思われた.
  • Hotz床は言語成績向上に有効か?
    赤田 典子
    2002 年27 巻1 号 p. 34-46
    発行日: 2002/04/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    1981年4月から1996年12月の間に鹿児島大学歯学部附属病院第二口腔外科でpushback法による口蓋形成術と術後言語治療を行った唇顎口蓋裂一次症例135名を対象として,4歳時の鼻咽腔閉鎖獲i得状況,破裂音単音発音の獲得状況および異常構音発現状況を調査した.さらにHotz床を使用した患者(装着群)70名(UCLP42名,BCLP28名)と使用しなかった患者(非装着群)65名(UCLP48名,BCLP17名)に分けて言語成績を比較分析し以下の結果を得た.
    1.135名中124名(91.9%)が4歳時に鼻咽腔閉鎖を獲得していた.装着群は94,3%,非装着群は89.2%が閉鎖を獲得し,閉鎖獲得時の日齢は,装着群が平均847日,非装着群が平均866日,獲得までの術後日数は装着群が平均312日,非装着群が平均292日で,いずれも群問に有意差はなかった.
    2.4歳時に破裂音単音の発音ができた者は,/p/では装着群の97.1%,非装着群の93.8%,/k/では装着群の92.9%,非装着群の93.8%,/t/では装着群の82.9%,非装着群の76.9%であった.両群ともに/P/,/k/,/t/の順に獲得する傾向を示した.UCLPの装着群は非装着群より/k/獲得時の日齢が有意に早かった.
    3.4歳時に異常構音を認めた者は,装着群では34.3%,非装着群では44.6%で,両群とも口蓋化構音が最も多かった.群間に有意差はなかった.
    4.手術時期の差による影響を除外するために,1歳5か月から1歳7か月の間に手術を行った61名(装着群31名,非装着群30名)を選択して同様の検討を行った結果でも両群問に差は認めず,言語成績に対するHotz床の効果は確認されなかった.
  • 岡崎 雅子, 横関 雅彦, 三木 善樹, 堀内 信也, 猪熊 健一, 湯浅 一浩, 劉 嘉仁, 川上 慎吾, 廣瀬 健, 日浦 賢治, 森山 ...
    2002 年27 巻1 号 p. 47-57
    発行日: 2002/04/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    Goslon Yardstickは,片側性口唇口蓋裂患者の不正咬合の程度を簡便に評価可能な再現性のある方法で,近年のヨーロッパを中心とした多施設比較研究に用いられている.今回我々は日本人片側性口唇口蓋裂患者に対して,GoslonYardstickを適用し評価の再現性と評価に影響を与える因子について検討を行った.資料として,徳島大学歯学部附属病院矯正科を受診した片側性口唇口蓋裂患者37症例の石膏口腔模型を用いた.これら37症例の石膏口腔模型を用いてMarsらの方法に基づき4人の矯正歯科医が評価者となり全症例を2度にわたってgroup1(excellent)からgroup5(verypoor)の5段階で評価を行った.評価方法の再現性についてはSpearmanの順位相関により検討を行った.更にGoslonscoreと各症例のoverbite,前歯部,犬歯部,大臼歯部のoverjetとの関係について回帰分析とSpearmanの順位相関により検討を行った.GoslonYardstickによる評価では,group1は1症例,group2は4症例,group3は15症例,group4は13症例,group5は4症例で,平均Goslonscoreは,3.41±0.61であった.4人の評価者による術者内,術者間の評価の再現性は比較的高かった.また,Gcslonscoreと前歯部overjetについてのみ単回帰式の適合度は1%以下で有意であった.重回帰分析のstepwise法では,前歯部overjetと犬歯部overjetが選択された.Spearmanの順位相関分析では,同2項目で,有意な負の相関を示した.
    以上からGoslonYardstickは,日本人片側性口唇口蓋裂患者に対する不正咬合の程度を比較的再現性良く簡便に評価可能な方法であることが示された.
  • 泉 健次, 小林 正治, 本間 克彦, 新垣 晋, 齊藤 力, 寺田 員人, 石井 一裕, 森田 修一, 野村 章子
    2002 年27 巻1 号 p. 58-66
    発行日: 2002/04/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    顎裂部への二次的骨移植は犬歯萌出前に施行することにより欠損補綴を用いない顎裂部咬合形成が可能とされる.しかし,同部の永久歯排列に関する詳細な報告はほとんどない.今回われわれは,骨移植後の咬合形成について今後の治療計画に反映させることを目的に,顎裂骨移植部の咬合形成を犬歯萌出状態により2群に分け臨床的に検討した.対象は1987年から1998年までに新潟大学歯学部附属病院口腔再建外科(旧第1口腔外科)で顎裂部への骨移植術を施行された88例とした.裂型別内訳は片側性口唇顎裂26例,両側性口唇顎裂2例,片側性口唇口蓋裂52例,両側性口唇口蓋裂8例であった.顎裂単位では犬歯未萌出群が51顎裂,犬歯萌出群が48顎裂であった.顎裂部咬合形成法は,犬歯または側切歯による閉鎖排列(C),側切歯の歯冠補綴(Cr),ブリッジ(B),義歯(D),歯の移植(T),インプラント(1),未補綴(N),不明(U),空隙あり,矯正治療中(O)に分類した.犬歯未萌出群ではそれぞれカテゴリCが28,Crが2,Bが1,Tが1,Nが1,Uが2,0が16顎裂で,一方犬歯萌出群ではそれぞれカテゴリCが22,Crが1,Bが14,Dが1,Tが3,Iが1,Nが2,Uが2,0が2顎裂であった.裂型別では,片側,両側性口唇顎裂,片側性口唇口蓋裂ではカテゴリCがそれぞれ15,4,29顎裂と最も多かったのに対し,両側性口唇口蓋裂ではカテゴリBが6顎裂と最も多かった.当科における骨移植術施行後の咬合形成は犬歯未萌出群61%,犬歯萌出群(骨架橋不良例を除く)52%において欠損補綴治療に頼らずに達成されており(カテゴリC,Cr,T,I),共にカテゴリCが最多であった.特に犬歯未萌出群ではカテゴリ0をあわせると92%の症例で空隙のない永久歯排列が実現可能で,犬歯萌出前に骨移植を行う意義を十分支持する結果となった.犬歯萌出群や両側口唇口蓋裂症例ではブリッジが比較的多かった.骨移植が犬歯萌出後であっても,抜歯・非抜歯症例にかかわらず1次目標は矯正治療か,あるいは欠損補綴によらない歯の移植やインプラントの応用による閉鎖排列が望ましいと考えられた.
  • 大山 知樹, 西本 聡, 清水 史明
    2002 年27 巻1 号 p. 67-71
    発行日: 2002/04/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    顎裂部2次骨移植術において,1次手術の際の顎裂部処置の影響や,骨膜の減張切開のため,移植骨が骨膜で完全に被覆できない症例に遭遇した.移植骨の術後吸収の原因は様々だが,骨膜欠損部からの肉芽増殖もその一端ではないかと考えられる.そこで腸骨海綿骨細片移植と同時に腸骨骨膜を採取し欠損部に遊離移植した.症例は男児5例,女児3例,手術時平均年齢は12歳であった.1例で術後血腫による創部離開により,移植骨の露出・吸収がみとめられたが,その他は概ね良好な結果がえられた.
  • 井野 章, 古川 雅英, 松本 有史, 高橋 喜浩, 水城 春美, 柳澤 繁孝
    2002 年27 巻1 号 p. 72-76
    発行日: 2002/04/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    EEC症候群は,指趾欠損(ectrodactyly),外胚葉形成不全(ectodermal dysplasia),口唇・口蓋裂(clefting)を三主徴とする奇形症候群で,1970年にRüdigerらがこれらの頭文字をとり最初に報告した.
    患者は生後1ヵ月の男児である.出生時,裂手,裂足,欠指(趾),合指(趾),両側口唇口蓋裂,中間顎の著しい突出を認めEEC症候群と診断,並びに両側水腎症,巨大尿管症による腎機能低下を認めた.また,明らかな下垂体機能不全は認められなかったが,感染を契機に電解質異常を来しており,下垂体の予備能力は低いと考えられ,中隔視神経異形成は除外できたが汎下垂体機能低下症と診断された.3ケ月時両側口唇鼻腔底形成術を,1歳8ヶ月時に口蓋形成術(Furlow法)を施行した.周術期に腎機能の低下はなく,経過良好である.
  • 側面頭部X線規格写真による頭蓋顔面骨格の形態分析
    窪田 泰孝, 松浦 理城, 鈴木 陽, 竹之下 康治, 中川 統充, 岡 正司, 白砂 兼光
    2002 年27 巻1 号 p. 77-83
    発行日: 2002/04/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    口蓋裂を伴ったまれな第9染色体短腕欠損症(46,XX,de1(9)(qter→p22:))の1例を報告した.症例は2歳1ケ月の女児で,突出した前頭,扁平な後頭,眼裂斜上,広い鼻根部を持つ上方を向いた鼻,長い人中,低位耳介および口蓋裂が認められた.側面頭部X線規格写真を染色体異常を伴わない口蓋裂単独患児のものと比較したところ,2歳1ヶ月時ではS-Ba問距離,N-Ba間距離ならびにOrとS.Nの垂直間距離に著しい短小が見られたが,7歳時ではこれらの値は対照に近づく傾向を示すとともに,下顎でのCd.Go.Me角が著しく大きくなる傾向を示した.
  • 田中 憲男, 橋本 節子, 中村 篤, 大塚 純正, 笠原 茂樹, 柴崎 好伸, 大野 康亮, 道 健一
    2002 年27 巻1 号 p. 84-92
    発行日: 2002/04/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    両側性唇顎口蓋裂患者では突出した顎問骨が可動性を有し,三次元的異常をきたしていることが多く,前歯部が重度の過蓋咬合を呈する場合が多い.このような患者の場合,歯科矯正治療のみでは咬合再構成を達成することが困難になることが生じる.
    今回,著者らは顎間骨の位置異常を有する両側性唇顎口蓋裂患者に対して,顎裂部骨移植を施行した.歯科矯正治療により両側顎裂部に犬歯の近心移動を行い,さらに下顎臼歯の直立化と圧下,上顎大臼歯の挺出を図り,補綴治療の範囲を最小限で済ませた症例を経験した.現在保定観察中であるが良好な咬合状態を保っている.
  • 平川 崇, 大野 康亮, 伊藤 仁, 柴崎 好伸, 道 健一
    2002 年27 巻1 号 p. 93-100
    発行日: 2002/04/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    複数の裂側永久歯先天欠如を伴った片側性完全唇顎口蓋裂に対し,口唇形成,口蓋形成,顎裂骨移植,歯の自家移植の順で各々至適時期に処置を施し,最終的に天然歯のみで咬合再構戒が可能となった症例を経験したので若干の考察を加え報告する.
    症例は右側完全唇顎口蓋裂の女児.542 5部の先天欠如を伴っていた.Davies法による初回口唇形成術を生後4ヵ月に実施し,Manchester法による初回口蓋形成を1歳5ヵ月に実施した.矯正歯科の初診は4歳.顎裂自家腸骨移植を8歳に実施し,形成された顎堤への隣接犬歯移動の後,歯の欠損部へ下顎両側第一小臼歯の移植を11および13歳に実施した.マルチブラケット法による咬合再構成後,現在保定中である.
    今回経験した症例では顎裂周囲の歯を始め全ての部位の非補綴的咬合再構成が可能であったが,それを達成するために長期の装置装着ならびに複数回の外科処置が必要であった.
  • 斎藤 茂, 三河 雅敏, 竹田 直子, 須澤 徹夫, 大塚 純正, 福原 達郎, 柴崎 好伸
    2002 年27 巻1 号 p. 101-112
    発行日: 2002/04/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    昭和大学歯科病院矯正科に来院した口唇裂口蓋裂患者の実態を把握する目的で,1977年の開設から1997年の問に当科を受診した新規登録患者を対象として経時的変化を含めた統計的調査を行い,以下の結果を得た.
    1.当科来院者数は開設の1977年から健保導入直後の1983年まで急激に増加し,それ以降常に120名/年を越えているが,1989年をピーク(161名)にわずかに減少した.
    2.初診時,資料採得時,動的治療開始時の平均年齢はそれぞれ,7歳6カ月,7歳10カ月,9歳6カ月であるが,いずれも開設時より経年的に若年齢化しており,また資料採得時のHellmanの歯齢もfiAの割合が増加していた.
    3.裂型別発現頻度は唇顎口蓋裂58%,口蓋裂20%,唇顎裂14%,唇裂8%であるが,経年的比率では唇顎口蓋裂の減少と口蓋裂の増加が目立った.一方,男女比は唇裂と唇顎裂ではほぼ同等・唇顎口蓋裂では男子が・口蓋裂では女子が多かった.片側破裂症例ではどの裂型においても左側が右側の1.9倍の発現頻度であった.
    4.動的治療に用いた最初の装置は拡大装置,上顎前方牽引装置,オトガイ帽装置の順に多く使用されていた.上顎前方牽引装置のみが経年的に増加し,他の2装置は減少していた.
    5.患者の居住地域は東京都が最も多く全体の1/3以上を占め,経年的増加傾向を示したが,当科の所在地である大田区と近隣3区(世田谷,目黒,品川)に限定すると,経年的に減少していた.
    6.紹介元医療施設は本学の3診療科(形成外科,小児歯科,口腔外科)を合わせると全体の3/4以上を占めており,経年的に増加していた.
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