日本口蓋裂学会雑誌
Online ISSN : 2186-5701
Print ISSN : 0386-5185
ISSN-L : 0386-5185
片側唇顎口蓋裂の術前顎矯正による治療成績
平川 崇佐藤 麻衣子宮崎 英隆松本 亨三島 木節小林 眞司安村 和則山本 康鳥飼 勝行
著者情報
ジャーナル フリー

2004 年 29 巻 3 号 p. 287-297

詳細
抄録
神奈川県立こども医療センターを受診した片側完全唇顎口蓋裂患者18名の術前顎矯正の治療成績について報告する.
術前顎矯正に使用した装置は,裂部周囲を埋める加工を施した上顎石膏模型の上で製作した硬性レジン製の口蓋床を用いた.維持安定には床の裂部唇側に付与されたフックから頬部へ向けて貼付したCheekstrapと義歯安定剤を用いた.
術前顎矯正に要した期間は平均で生後17日から生後204日までであった.
口蓋床装着により一回哺乳量,一回哺乳時間,時間あたり哺乳量,一日哺乳量共に改善した.それらの値はホッツ床による哺乳改善効果と変わらない結果であった.
全例で,セグメント裂側断端の頭側偏位の改善と誘導された成長による裂部の狭小化が観察された.顎裂において平均値で術前10.8mmが術前顎矯正により1.5mmにまで狭められた.硬口蓋裂後端幅において平均で術前13.0mmが術前顎矯正により8.5mmにまで減少した.歯槽弓幅は緩やかに増加し同年齢非裂者の平均値を上回っていた.
本法により比較的速やかにcollapseすることなく裂部狭小化が叶うことが示された.
著者関連情報
© 一般社団法人 日本口蓋裂学会
前の記事 次の記事
feedback
Top