日本口蓋裂学会雑誌
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スピーチエイドによる発音時口蓋帆挙筋の疲労軽減効果
野原 幹司舘村 卓小谷 泰子佐々生 康宏尾島 麻希
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2006 年 31 巻 1 号 p. 23-30

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抄録

口蓋裂術後の鼻咽腔閉鎖不全症例では,連続音表出時に口蓋帆挙筋が疲労することが報告されている.本研究では,スピーチエイドを装着することにより,連続音表出時の口蓋帆挙筋の疲労が軽減されるかどうかを検討した.対象は,口蓋裂術後の鼻咽腔閉鎖不全症例のうち,Palatal Lift Prosthesis(PLP)装着症例4例,Bulb-attached Palatal Lift Prosthesis(Bulb-PLP)装着症例4例の計8例とした.装置非装着時,装着時において1秒1回のペースで[P〓]を50~60回表出させた時の口蓋帆挙筋筋電図を採取し,各表出時のMean power frequency(MPF)を求めた.表出順に対するMPFの回帰直線を算出し,その傾きの大きさをもとに装置非装着時,装着時の疲労の程度の検討を行った.非装着時と装着時の傾きの有意差を検定した結果,PLP症例,Bulb-PLP症例ともに,非装着時と比べて,装着時には傾きの絶対値が有意に小さくなることが示された.すなわち,装着することによりMPFの低下の程度が軽減されることが示された.以上の結果から,口蓋裂術後の鼻咽腔閉鎖不全症例においてはスピーチエイドを装着することにより連続音表出時の口蓋帆挙筋の疲労が軽減されること,およびその疲労軽減効果はスピーチエイドのタイプによらないことが明らかとなった.

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© 一般社団法人 日本口蓋裂学会
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