抄録
口唇裂・口蓋裂の存在と口唇形成手術が顎・顔面頭蓋の側貌形態にいかなる影響をおよぼし,披裂形態によりどのような差が認められるかを解明するため,本教室で同一術者により,ほぼ同一時期に手術をおこなった口唇裂・口蓋裂患者134例と奇形を有しない健康者30例の4才時の側貌頭部X線規格写真について検索をおこない,次の結論を得た,
1.口唇形成術式による術後の顎・顔面頭蓋の側貌形態には差が認められなかった.
2.口唇の披裂程度の差異は術後の顎・顔面頭蓋の側貌形態に差を生じていない.
3.顎・顔面頭蓋の側貌形態におよぼす影響は口蓋裂の有無と,その口蓋形成術に主因があり,完全唇顎口蓋裂群,不完全唇裂完全顎口蓋裂群,硬軟口蓋裂群に著明な,軟口蓋裂群にやや軽度な上顎骨の前後的劣成長を認めa上下的にも上顎歯槽突起の劣成長を認めた.
4.この結果は上下顎間関係にも同じ結果を招来しており,完全唇顎口蓋裂群,不完全唇裂完全顎口蓋裂群,硬軟口蓋裂群においては明らかにconcaveなprofileを示し,軟口蓋裂群ではやや軽度であった.
5.どのような裂形態においても,頭蓋底に影響がみられなかったが,硬軟口蓋裂群のみが多少小さな∠BaSNを示したことは,この形態のみに鼻中隔の後方遊離が存することが影響しているのではないかと考えられる.