日本口蓋裂学会雑誌
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口唇・口蓋裂患児の術前全身状態の評価について
大井 久美子鹿島 秀男嶋田 昌彦植松 宏鈴木 長明久保田 康耶
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1981 年 6 巻 1 号 p. 58-69

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抄録

昭和51年1月から昭和55年12月までの5年間に,東京医科歯科大学歯学部附属病院に入院し,口唇・口蓋形成術および口唇修正術を受けた6歳までの患者890名,延べ1135例を対象に,術前の全身状態評価について調査し,併せて口唇・口蓋裂患児以外の6歳までの患児50例の検査値とを比較検討した.
われわれが調査した昭和31年から同39年までの口唇・口蓋裂患児の身長,体重は標準より劣っていたが,今回の調査ではほぼ標準なみであった.
一般血液検査値は,口唇・口蓋裂患児も,その他の患児も,正常値を大きく逸脱するものはなかった.血清生化学検査値では,GOT, GPT, Al-P, LDHは高値を示したが,肝機能障害を思わせる症例はみられなかった.口唇・口蓋裂患児は,全体の7.1%に合併奇形がみられ,心奇形は1.5%,小顎症は3.8%であった.全身状態評価からみると,口唇・口蓋裂患児の麻酔危険度はrisk I か II で,それ程難しい麻酔ではないが,小顎症や心奇形を合併しているもの,あるいは裂奇形のため上気道の感染をおこしやすいことなどを考慮に入れ,慎重な麻酔が必要である.

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© 一般社団法人 日本口蓋裂学会
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