日本口蓋裂学会雑誌
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下顎正中裂および下口唇正中裂の1症例
佐藤 研一今井 裕石山 信之小林 操金沢 春幸
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1981 年 6 巻 1 号 p. 70-76

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抄録

今回,われわれは極めて稀れ(本邦で9例)な奇形とされている下顎正中裂および下口唇正中裂の症例を経験したので報告した.
患児は生後3ケ月女児,2児中第2子で同胞に異常は認められない.両親に血縁関係はなく,家系中にも異常を認めない.母親は妊娠2ケ月頃,転倒により腰部を打撲したことを除き,妊娠経過は順調であった.全身的には栄養発育状態は良好で,他部合併奇形などの異常を認めない.局所的には下口唇が正中で縦裂し,さらにその破裂下端部より願部にいたる腫瘤が認められたという(但し出産病院で腫瘤は切除) .下顎骨も正中離開し,そのため左右の下顎は個別に可動性を有していた.また,舌尖は下顎離開部を越え,その前方に附着し固定されていた.X線的には下顎骨正中離開を示すも,歯胚数の異常や舌骨の欠損は認められなかった.両親ならびに患児の染色体数は正常で,生後4ケ月目にZ-plastyによる下口唇形成術および舌小帯伸展術を施行した.術後経過は良好で現在に至っている.下顎裂に対する処置は,今後充分な観察の下に,下顎の発育を待ったうえ行う予定であり,併せてその論拠にっいての考察を附して報告した.

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