日本口蓋裂学会雑誌
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内視鏡による鼻咽腔運動解析とその信頼度
伊吹 薫Hughlett L. Morris宮崎 正松矢 篤三Michael P. Karnell
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1982 年 7 巻 1 号 p. 29-47

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抄録

鼻咽腔内視鏡(NPF)及び側方蛍光X線(Cine)を用い, 正常者の鼻咽腔運動を同時記録した.そして以下の事柄につき検討した.
1) NPF設置の安定性.
2) NPF設置の再現性とその条件.
3) NPFviewの信頼性と確実性.
4) NPFviewの再現性
5) NPFviewより得られる鼻咽腔運動に関する情報.その結果, 次の様な事実が判明した.
1) 本研究において報告されたNPF設置法は記録中に高い安定性を示した.
2) 同一被験者において類似したNPFviewを幾り返し得ることは可能で, その際にNPF先端と頚部(本研究では測定点としてAtlasを用いた)の問に一定の距離関係が存在していた.
3) NPFviewは信頼性の高い鼻咽腔運動の計測が可能であり, またCineと比較してもその確実性は劣っていなかった.しかし, 得られた結果はArbitraryunitsであって定量化は困難と考えられた.
4) NPFは繰り返し記録を行っても極めて再現性の高いdataをもたらすものと考えられた.
5) 鼻咽腔閉鎖面を上方から観察した場合に認められる咽頭側壁運動は, 口蓋帆挙筋の作用によって生じたものと考えられた.しかし, この動きが鼻咽腔閉鎖時の最大側壁運動とは考え難く今後さらに研究する必要があると考えられた.
6) 鼻咽腔閉鎖運動は個人によって, 異ったパターンを示すことが示唆された.NPFは鼻咽腔閉鎖運動の基礎的臨床的研究に有用な情報をもたらす器具であることが, 改めて確認された.

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© 一般社団法人 日本口蓋裂学会
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