口蓋裂手術の最終目標は, 正常な言語の獲得と良好な上顎の発育にあり, 正常な言語の獲得には完全な鼻咽腔閉鎖機能が必要不可欠な要素である.そして手術成績を判断するためには対象や検査方法を厳選する必要がある.
今回著者らは順天堂大学形成外科において昭和47年12月から昭和50年12月の間に口蓋裂初回手術をうけ, 追跡し得た49例を対象に鼻咽腔閉鎖機能と会話明瞭度につき, 調査・検討を行った.対象全例は1才台に同一術者によりpushback手術をうけており, 言語治療あるいは再手術は行っていない.
その手術成績は, 鼻咽腔閉鎖機能を絞扼反射にもとめれば92%, p.b音の発音にもとめれば100%達成されており, 鼻咽腔閉鎖機能面からみる限り, 本来の手術目的を達成できたものと考える.一方, 言語成績からみると, 正常なものは60%, 残りの40%は何等かの異常構音を示し, これらには被検児の年令を考慮すれば, 構音の未熟さに由来し, 自然改善が見込まれるものが含まれているであろうが術後の言語治療の重要性も明らかとなった.