日本口蓋裂学会雑誌
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唇顎口蓋裂の歯科矯正治療
治療方法と時期
大塚 純正柴崎 好伸福原 達郎
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1982 年 7 巻 1 号 p. 66-76

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抄録

口蓋裂患者の矯jE治療は, 一般の患者に比べ困難で長期に及ぶことは周知のとうりである.従来, この矯正治療は早期より成人まで歯顎顔面のコントロールを行うcontinuous monitoring(連続観察)が一般的であり, それにより患者は長期にわたって手厚い治療を享受することができたわけである.しかし, 一方では過剰治療などこの治療の概念に関するさまざまな問題点が指摘されている.
そこで, 早期治療の欠点, つまり,(1)多くの専門分野の治療が幼児期に集中するため, 過剰治療に陥りやすい.(2)患者側の時間や経費負担が大きい.(3)後期治療の必要性を解消するほどの治療効果は期待しえない, などを考慮し, 4つの治療時期を設定し, それぞれの時期に短期間の集中治療を行う昭和大学方式を提唱する.
StageI:乳歯列期(歯牙年齢 IIA-IIC, 3~5才)原則的には治療は行わない.ただし,
(1)crossbiteの程度がひどくて.上下の歯が咬み合わないもの
(2)両側性唇顎口蓋裂の側方拡大
(3)言語治療士から要請のあるものなどについては治療を行う.
Stage II:混合歯列前期(歯牙年齢IIIA, 6~8才)
不正咬合に起因する心理的障害の除去とsegmentsのrepositioningを目的として, 前歯の正しい排列と乳臼歯群の側方拡大を行う.
Stage III:永久歯列前期(歯牙年齢IIICIVA, 11~14才)本格矯正の時期で, 歯および歯列の適正な排列と機能的咬合の確立を目標とする.
StageIV:永久歯列後期(歯牙年齢IVA-VA, 17~19才)矯正治療完了期で, 補綴処置に移行するまでの歯列の再排列や外科手術前後の矯正を行う.

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© 一般社団法人 日本口蓋裂学会
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