臨床美術ジャーナル
Online ISSN : 2758-3457
Print ISSN : 2187-316X
原著
臨床美術士北澤晃の省察的実践の意義の考察
伊藤 由美子
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2024 年 13 巻 1 号 p. 25-33

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抄録

本研究では,臨床美術士北澤晃の2006年博士論文から2022年特別寄稿までの実践研究を通して,どのような課題をもち,どのように課題解決に至ったのか,研究の足跡をたどり,北澤晃の臨床美術実践学構想の視点を検証することを目的とする。北澤は臨床美術の場でトランスクリプト作成をもとに個性的な文脈を読み取るナラティヴ・アプローチへの転換を試みた。事例研究を通して臨床美術士のナラティヴ・コンピテンス(物語能力)の重要性を自覚した。臨床美術士は〈他者〉との関わり合いによって生成する私たちのかけがえのなさを,意味生成ケア〈つくり,つくりかえ,つくる〉活動を通して,さまざまな現場で実践研究し,個々人の〈ものがたり〉の更新に寄与するならば“実践知”として重要な意味をもつと述べている。2021年原著では,子どもの心の傷つきの修復を目的とするコフートの自己心理学理論を援用した意味生成ケア理論の構造化を位置づけ,新たな視点を得,関係論的人間観に根差した臨床美術実践学視点を示唆してくれた。

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© 2024 臨床美術学会
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