本研究では,ASD児とTD児を対象に臨床美術アートプログラムを個別に行い,快の感情の変化と相互交渉における自発的な語りの特徴について,探索的に検討した事例研究である。その結果,感情の変化についてはASD児とTD児も「親和」の感情が増加する傾向が見られた。この結果は,安齋・上村(2023)1)の大学生を対象にした臨床美術アートプログラムを通した感情の変化について対象者すべてに「親和」の感情が増加する傾向が見られたことと同様であった。安齋・上村(2023)では,大学生における語りの内容と快の変化において,1)①自己と他者(家族)の語りのグループにおいて「非活動的快」の増加,2)②自己と他者(友人),③自己と感覚(感じ方・自然など)の語りのグループにおいて,「非活動的快」「活動的快」の増加,3)④自己(好きなこと・考え)の語りのグループにおいては「活動的快」の増加,の3つのグループに分けられた。本研究においては,TD児では,大学生で多く見られたグループである,2)②自己と他者(友人)「非活動的快」「活動的快」の増加が見られた。ASD児では,大学生では稀に見られたグループである,3)④自己(好きなこと・考え)「活動的快」の増加が見られた。尚,ASD児においては継続的な介入により,語りの内容に変化が見られた。
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