政府は,共生と並んで「予防の概念」を新たに取り入れて,認知症施策を加速させる方針を示した。その具体策として,高齢者らの積極的な参加を促すよう「通いの場」の拡大・充実のあり方を検討することが課題となっている。1)本稿は,札幌市南区第2地域包括支援センター・介護予防センターもいわの介護予防事業2)において,2016年度より現在に至るまで導入されている臨床美術が,職員と臨床美術士との連携によって参加者のニーズに応え,「通いの場」つくりを応援し更に,参加者の意欲を高め社会参加に導く活動を提案する。介護予防のために始まった「通いの場」は, 高齢者のみならず誰もが安心して暮らせる地域づくりの場として期待されている。臨床美術は,アートを通して新たな出会いと対話の場をつくり,世代や個人の特性を超え共生の場をつくることのできる活動である。このことを踏まえ,今後の臨床美術の可能性を考察した。