臨床美術ジャーナル
Online ISSN : 2758-3457
Print ISSN : 2187-316X
事例報告
臨床美術は重い障害のある子どもの楽しみに寄与できるかⅠ
〜造形活動におけるQOL評価を指標に〜
野口 雅恵
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ジャーナル 認証あり

2024 年 13 巻 1 号 p. 51-58

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抄録

本報告では,臨床美術が重い障害のある子どもたちの生活の質(QOL)向上に寄与できるかを明らかにすることを目的とする。本研究では,脳性麻痺などの重い障害のある小中学生3名に対して2022年度に月1回,30〜40分の個別臨床美術講座を実施した。評価方法として,池田(2017)の「重度・重複障害児の造形活動における意欲と能力発揮を基軸としたQOL評価法」を用い,講座中の子どもたちの意欲や能力の発揮をビデオ分析で評価した。QOLを「意欲」と「能力発揮」に基づき6段階で評価し,それを4段階に再分類した。その結果,対象者全員がQOLの維持,向上を示した。特に,絵具の使用など実際に手を動かして制作を行なう際にQOLが特に高まった状態を示した。本研究は,対象者3名の造形活動におけるQOLに対して,臨床美術が有効に働いたということを示し,今後さらに質的な分析を含めた継続的な研究がさらに求められる。

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© 2024 臨床美術学会
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