2016 年 56 巻 9 号 p. 612-616
症例は47歳女性.前頭部痛と右耳鳴に続いて左片麻痺が出現した.外傷歴や血栓性素因を含む基礎疾患はなかった.血管造影では上矢状静脈洞閉塞,右横静脈洞狭窄を認め,脳静脈洞血栓症と診断した.抗凝固療法開始後,血栓は消退し,頭痛,耳鳴,左片麻痺も消失した.発症7ヶ月後に左耳鳴が出現した.血管造影では脳静脈洞血栓症は再発していなかったが,左後頭動脈から左横静脈洞~S状静脈洞移行部に流入する硬膜動静脈瘻が確認された.左後頭動脈の用手的圧迫を開始し,以後耳鳴の増悪はなく,画像上も硬膜動静脈瘻の増悪や脳静脈洞血栓症の再発はなかった.脳静脈洞血栓症では慢性期に硬膜動静脈瘻が発覚することがあり,経過観察が必要である.