2020 年 60 巻 10 号 p. 663-667
いわゆる心因性の身体症状を呈する高齢患者において,症状の加齢に伴う変化に関して老年精神医学の立場から考察した.近年心因性の身体症状の診断基準はその変更がなされ,より心身症の定義に近づいている.高齢期は身体各臓器の老化現象が進み,脳もその例外ではない.脳機能が全般的に低下していく中で,もとからある精神疾患の症状はその程度が緩和されていくことを臨床的知見からしめした.さらに認知症も加わればその緩和のスピードは早くなる.超高齢化が進むわが国においては,加齢に伴うポジティブな面に着目して対応すべき必要性を述べた.