2020 年 60 巻 4 号 p. 278-284
症例1は74歳男性,症例2は65歳男性で,いずれも心房細動に対する抗凝固薬を自己中断し心原性脳塞栓症を発症した.2例ともに左心耳内可動性血栓を認めた.症例1は第8病日に血栓摘出術を予定したが手術当日朝に再梗塞を生じ後遺症を残す結果となった.症例2は第8病日に左房内血栓摘出術・左心耳閉鎖術を実施し転帰は良好であり,症例1と転帰に大きな差を生じる結果となった.脳梗塞発症後の心内血栓摘出術の適応や時期については未だ統一された見解はなく,施設間の差も大きい.今後は左房内血栓の大きさや形態,脳梗塞の大きさや出血性梗塞の有無などを踏まえた開心術の時期に関するエビデンスの構築が望まれる.