2021 年 61 巻 9 号 p. 602-612
筋強直性ジストロフィー1型の遺伝学的診療について,臨床遺伝専門医を対象に調査を行った.患者自身の課題への対応は,診療科による違いや中枢神経障害の影響が見られた.出生前診断(prenatal diagnosis,以下PNDと略記)・着床前診断(preimplantation genetic testing,以下PGTと略記)については,男性も対象,男性のPNDに対応している,PGTの基準を緩めるべきとの回答が予想より多かった.このため,全国遺伝子医療部門参加施設に実施状況を調査した.男性患者でPND・PGTを実施した施設は無かったが,PGT申請中が1施設あった.生殖医療の社会的コンセンサスは,技術進歩や時代背景の影響を受ける.優生思想を排除した上で,当事者を含む多分野が参加した協議によるコンセンサス形成が重要である.