2022 年 62 巻 6 号 p. 469-474
症例は緩徐進行性の認知機能低下を示した61歳男性.頭部MRIで左前頭葉皮質・皮質下白質にT2強調画像高信号を認め,同部位の軟膜は造影効果を認めた.脳生検により,IgG4関連疾患(IgG4-related disease,以下IgG4-RDと略記)の診断に至った.他臓器にIgG4-RDを示唆する病変は認めず,血清IgG4は正常であった.メチルプレドニゾロンパルス療法およびプレドニゾロン内服を開始し,認知機能の著明な改善および頭部MRI上の病変縮小を認めた.諸検査で診断困難な軟膜・脳実質病変を認めた際は,血清IgG4の上昇や他臓器病変が無くとも,IgG4-RDを鑑別に挙げ脳生検を検討することが重要である.