2022 年 62 巻 8 号 p. 632-636
症例は57歳女性,副腎性クッシング症候群に伴う高コルチゾール血症を認めていた.副腎腫瘍摘出術後2ヶ月に,両側の手指から前腕に激しい疼痛が出現し,2週間で手指伸展障害を主としたまだら状の上肢麻痺をきたした.手内在筋萎縮と拘縮を伴い,神経痛性筋萎縮症(neuralgic amyotrophy,以下NAと略記)と考えた.腕神経叢・前腕造影MRIと超音波検査で末梢神経に異常を指摘できず,神経伝導検査で上肢の神経の複合筋活動電位が低下していた.IgM抗GalNAc-GD1a抗体が検出され,免疫グロブリン大量療法を施行し,疼痛は消失し,筋力低下と拘縮は軽減した.本例は,免疫介在性の病態が示唆され,NAの疾患概念の整理を進めていく上で重要な症例である.