2023 年 63 巻 5 号 p. 298-304
糖尿病を有する67歳女性.痙攣発症の両側前頭葉皮質下出血の精査で上矢状静脈洞にMR venographyで描出欠損,3D turbo spin echo法T1強調画像で血栓を認め,脳静脈洞血栓症と診断した.遊離T3,T4高値,甲状腺刺激ホルモン低値,抗甲状腺刺激ホルモン受容体抗体,抗Glutamic Acid Decarboxylase抗体陽性を認め,バセドウ病と緩徐進行1型糖尿病を併発する多腺性自己免疫症候群(autoimmune polyglandular syndrome,以下APSと略記)3型と診断した.心房細動も有し,急性期のヘパリンとアピキサバンで血栓は部分退縮した.脳静脈洞血栓症の原因検索で複数の内分泌疾患を同定した場合,APSを考慮する必要がある.