2024 年 64 巻 8 号 p. 589-593
多系統萎縮症(multiple system atrophy,以下MSAと略記)の診断基準を満たした自己免疫性小脳失調症(autoimmune cerebellar ataxia,以下ACAと略記)の2症例を報告する.症例1は72歳男性,症例2は68歳男性,両者ともに小脳性運動失調症,自律神経障害,錐体路徴候を認めたが,症例1では自然経過で症状の改善を認めた点と脳脊髄液検査で炎症所見を認めた点,症例2では急速な進行を認めた点がMSAとして非典型的であった.免疫組織染色にて両者の血清中にプルキンエ細胞細胞質を標的とする自己抗体を検出したことから免疫療法を施行し運動失調の改善を認めた.MSAに類似する臨床像を呈し,免疫療法が奏効するACAが存在することが示唆された.