2025 年 65 巻 4 号 p. 278-283
症例は63歳女性.1997年に多発性硬化症(multiple sclerosis: MS)と診断された.2016年以降脳の無症候性病変が拡大したが,AQP4抗体は陰性だった.2021年10月より意識変容を認め入院.腰椎穿刺中に意識レベル低下,脳波で急速眼球運動を認めた.反復睡眠潜時検査でナルコレプシーと診断したが,情動脱力発作は認めず,髄液オレキシン濃度は正常だった.再測定したAQP4抗体は陽性で,視神経脊髄炎スペクトラム障害(neuromyelitis optica spectrum disorder,以下NMOSDと略記)と診断.ステロイドパルス療法を施行し,症状,検査所見ともに改善した.視床下部病変がなく,髄液オレキシン正常のNMOSDでもナルコレプシーを呈する可能性があり,睡眠生理学的検査が重要である.