抄録
1995年4月からの約20年間に起立性頭痛で受診した連続86例の記録を再検討し,特発性低髄液圧症候群(spontaneous intracranial hypotension; SIH)が疑われた56例の症例集積研究を行った.性差,好発年齢,随伴症状はSIH症例での報告と一致した.激しい起立性頭痛のある患者群ではMRIの硬膜造影所見がより軽度で,髄液漏出に対する代償機転の障害が疑われる.髄液漏出部位を特定できず腰部で硬膜外自家血注入(epidural blood patch; EBP)を行った患者群と漏出部位近傍でのEBP治療群とで効果に有意差はなかった.発症から起立性頭痛が消失するまでの日数と発症から受診までの日数との回帰係数は1.243,切片は14.8日であり,受診,診断が早い分だけ回復が早い傾向があった.