論文ID: cn-001008
症例は56歳女性.出産時大量出血した既往がある.53歳頃より両下肢の筋硬直と腰曲がりが徐々に出現した.初診時は股関節と膝関節の可動域制限があり,触診で下肢筋に硬直と疼痛を認めた.抗VGKC複合体抗体が弱陽性だったことから,stiff-person症候群やIsaacs症候群を疑ったがジアセパム内服に反応しなかった.一方,血液検査で内分泌学的異常を認めたため精査し,出産時出血後の汎下垂体機能低下症と診断した.ホルモン補充療法の開始後下肢筋の硬直が著明に改善した.汎下垂体機能低下症でstiff-person症候群様の症状を来す例を稀に認め,鑑別に挙げる必要がある.