抄録
ヒューマンエラーは、見間違いなどの知覚段階のスリップ、思い違いなどの判断段階のミステイク、言い間違いなどの行為段階のアクションスリップのいずれにおいても共通のメカニズムが仮定されている。しかし、これらのメカニズムの共通性を保証する研究は、これまで行われていない。本研究では、女子短大生(平均18.31歳)に対し、知覚、判断、行為段階の各情報処理段階のエラー誘発課題として、数字の書き写し課題、ルーチンスの水瓶問題、急速反復書字課題を用い、共通のエラーメカニズムとして仮定される注意要因と誤ったスキーマ活性化要因を操作した実験を行った。注意要因は、課題実施速度の教示の違い、エラースキーマ活性化要因は、正誤いずれかのスキーマの活性化を誘発させる文脈の違いによって操作した。実験の結果、いずれの段階においても、エラー発生には、注意と誤ったスキーマの活性の要因が共通に働くことが確かめられた。