TOT(tip-of-the-tongue)現象の解消について,なぜ突然に答えが思い浮かぶ”pop-up”が起こるのか,現在のモデルからの説明は困難である。そこで本研究は,思考の行き詰まりから突然解消するインサイト(insight)とTOT解消との類似性に注目し,TOTが解消に至るまでに,大脳右半球特有の表象活性が起こるという予測を立て実験を行った.40名が実験に参加し,著名人の顔に対し既知判断(DK, FOK, TOT, K)を行い,左右各視野(lvf-RH, rvf-LH)にプライム刺激が瞬間呈示された.続いて名前の命名RTを測定し,顔に対する既知判断4回答におけるプライミング効果と左右差について比較検討を行った.その結果,TOT人名について,lvf-RHにプライム刺激を呈示した条件で顕著なプライミング効果が示された.以上より,TOT状態が解消する際,RHによる潜在的な表象活性が機能することが明らかになり,pop-up現象の説明を可能にした.