抄録
高不安者は注意の処理資源が多いというEysenckらのAttentional Control Theoryについて、大学生の高・低社会不安者を対象に知覚的負荷課題を用いて検証した。知覚的負荷が高まれば、注意資源容量が限界となり課題無関連刺激が処理されないと考えられ、低社会不安者は高負荷条件では課題無関連刺激を処理しなかったが、高社会不安者は高負荷条件でも処理した。この結果からでは、高社会不安者の注意制御困難性、または顕著性への敏感さにより、課題無関連刺激へ注意を向けていた可能性が考えられる。そこで、前者に対し注意の捕捉を利用してターゲットへと注意を向けさせ、後者に対しては課題無関連刺激をマスキングし顕著性を低下させた。その結果、どちらの実験でも低社会不安者が課題無関連刺激を処理しない知覚的負荷条件において、高社会不安者は処理していることが明らかとなった。以上より、本実験の結果は高社会不安者の注意資源容量の多さを反映していると考えられる。