抄録
Anderson & Green(2001)はThink/No-Think課題を用いて,意図的な記憶の抑制が可能であることを示した。本研究は記憶の抑制に対する代替思考方略の効果,抑制の時間的な変化について検討した。2日間の実験を行った。1日目は34名の参加者に単語ペア(手がかり-ターゲット)を学習させた。学習後,単語ペアが未提示,抑制,促進の3条件に分けられた。手がかりのみが提示され,促進条件は手がかり再生,抑制条件は手がかり抑制をさせた。各ペア,12回反復して提示した。未提示は提示されなかった。代替思考群のみ,抑制時に非言語的画像を考えるよう方略を指定した。その後,手がかり再生テストを行った。2日目は手がかり再生テストのみを行った。結果,統制群でのみ記憶の抑制が起きており,代替思考方略は抑制に効果的でない可能性が示唆された。また時間による差はなく,抑制には時間的な持続性があると考えられる。