抄録
本研究の目的は日本人中高年者の自己高揚を促す自伝的記憶の性質を明らかにすることであった。98名の中高年者を対象に質問紙調査を実施した。質問紙は統計情報、自己評価を測定する尺度、想起することで自己評価が高まる自伝的記憶に関する自由記述、抽出した自伝的記憶の性質に関する主観的評価、という4つの内容から構成した。性質の主観的評価においては、記憶の想起に伴う感情価、自己関連性、鮮明さ、そして記憶の想起頻度、重要性という5つの性質を4件法で評定させた。回答に不備のあった22名を除く76名の回答を分析した結果、自己高揚に関連する自伝的記憶の内容は「達成動機の充足に関わる内容」と「親和動機の充足に関わる内容」の2種類に大別することができた。また、この2種類の内容間で各性質の評定点を比較した結果、想起頻度および重要度の評定点は「達成動機の充足に関わる内容」の方が有意に高かった。