抄録
目周辺情報が顔認知に及ぼす影響を明らかにするため,プライミング・パラダイムを用いた検討を行った。実験の各試行はプライム課題と後続するターゲット課題から構成される。ターゲット課題では既知人物の顔が提示され,当該人物の性別を判断することが求められた。プライム課題では,ターゲット課題で提示される人物と「同一人物の目」「同一人物の鼻」「同一人物の口」,「別の人物の目」「別の人物の鼻」「別の人物の口」,および「黒四角」の7刺激からひとつが提示され,何もせずに見ていることが求められた。「黒四角」をベースラインとした分析の結果,プライムとして「同一人物の目」が提示されるとターゲットに要する反応時間が短くなり,また,プライムとして「別の人物の目」が提示されるとターゲットに要する反応時間が長くなることが明らかとなった。以上の結果は,目周辺情報によって顔全体情報が活性化されることを示唆するものである。