抄録
実際に起こった出来事を知覚したことに由来する記憶と、自分の思考やイメージ、夢に由来する記憶とを区別する過程をリアリティモニタリングと呼ぶ。本研究では、我々が日常場面においてどのようなリアリティモニタリングのエラーを犯しやすいのかについて調査的に明らかにした。35名の調査協力者に対して、エラーの内容、エラーが生起した時の心的状態、エラーが生起した理由として想定されるもの等を記録することができる冊子を手渡し、3週間後に回収した。その結果、75件のエラー事例が得られ、それらをエラーの性質に基づいて6件のカテゴリに分類した。最も多くの事例が見られたのは、“焦り、寝ぼけ、疲労、他の課題への集中などから来る注意不足による確認・記銘不全”のカテゴリであった。この結果は、日常場面において見られるリアリティモニタリングエラーの多くが、記銘時の要因に起因する混乱によるものであることを示唆していると考えられる。