円滑なコミュニケーションを達成する上で、他者への視点切り替えは重要である。これには、脳のミラーニューロンシステムが関与すると推定されるが、自己視点で見た刺激がどのように他者視点に立った表象へ投影されるかについては明らかになっていない。本研究では、この脳情報処理を明らかにするために、矢印と円を同時に呈示し、矢印の向きに対し円が右か左か方向判断を要求する課題遂行時の脳波を測定した。脳波解析より、自己視点条件(例:上向き矢印に対して右側の円を右と回答)では、視覚刺激に対して反対側の頭頂葉θ波(4-6Hz)が増加した。興味深いことに、他者視点条件(例:下向き矢印に対して右側の円を左と回答)では、この反対側θ波出現後、前頭葉、同側の頭頂葉θ波も観測された。以上の結果は、各視点に立った視覚表象が頭頂葉で表現されること、その視点の切り替えは同一の脳リズムでつながる前頭葉とともに行われることを示唆する。